草地に残る光

草の高いところに、夕方の光が細く残っていた。白い穂のようなものは、風が吹くたび同じ方向へ倒れ、遠くの建物や橋はその向こうで暗くなり始めている。近くの草は一面に見えるのに、光の当たる場所だけが一つずつ分かれていた。
広い草地を見ると、まず空いている場所を探す。歩けるところ、座れそうなところ、向こう側へ抜けられそうなところだ。けれど背の高い草のそばに立つと、そこは何もない場所ではなく、風が通るための細かな線で満ちている。遠くの建物は変わらず立っているが、草地は数秒ごとに表情を替える。場所の大きさを測るとき、動かないものだけを目印にするのは少し足りない。
橋の方から車の音らしいものがして、草の揺れが一度途切れた。音はすぐ遠ざかったが、白い穂はまだ光を返している。目立つものは遠くにあるとは限らない。足元で繰り返される小さな動きがあるから、夕方の明るさがどこまで残っているか分かる。
日が低くなると、草地の端から影が広がった。消えていくものを数えるより、最後まで明るい穂を見ている方が、帰る方向を静かに決めてくれた。