壁際の重なり

壁際の枝に、淡い色の花が重なっていた。ひとつの花だけを見ようとしても、すぐ隣には別の蕾があり、葉の影が花びらの端へかかる。壁の平らな面があるために、枝の伸びる方向だけがいっそう複雑に見えた。
花は一輪ずつ見れば、形も色も違う。けれど枝につながったままでは、どれが先に咲いたか、どれがこれから開くかを一目で決められない。近くのものほど、見る角度によって前後を替える。花の多さは、目を迷わせるためのものではなく、同じ枝に異なる時間が重なっていることを見せているのだと思う。
壁へ近づくと、葉の影が小さく揺れた。日が動いたのか風が触れたのかは分からないが、さっきまで明るかった花びらの一部が暗くなる。その変化で、影に入った花が消えるわけではない。むしろ明るい花だけを追っていた目が、そこに別の厚みがあることへ戻る。
少し離れて見ると、枝は壁の前で一つの大きな形になった。個々の花を数えるのをやめたとき、重なりの中に残った色の幅がよく見えた。