或る世界

客席から来る拍子

空の明るさと照明が、同じ客席を照らしていた

夕方の球場は、空の明るさをまだ少し残していた。内野の土は橙色に見え、外野の芝は照明を待つ前から均一に広がっている。座席には青い服らしい人影が重なり、遠くから見れば一つの色の面になった。

試合を見に来ると、いつも自分が何を見ているのか途中で分からなくなる。投げた球の速さを追うこともできるし、打者の構えが変わる瞬間を見ることもできる。けれど、隣の席から起こる拍手や、場内を一周して遅れて届く声もまた、同じ時間の一部だ。グラウンドだけを見ていれば、出来事は一つずつ起こる。客席まで含めて見ると、同じ一球がそれぞれの場所で違う速さで受け取られている。

照明が一つずつ強くなると、手前の手すりの影が濃くなった。誰かが立ち上がり、その人の向こうにいた観客が一瞬だけ見えなくなる。すぐに座れば視界は戻るが、さっきと同じ景色ではない。人の動きと歓声が重なるたび、広い球場のどこかで見逃されたものがあり、別の場所では新しく見つけられる。

日が落ちると、土の色だけが照明の下でいっそう明るさを増した。試合の進み方は分からなくても、客席とグラウンドの間を行き来する視線には、夜へ移るための短い拍子があった。