或る世界

立ち止まる輪郭

流れる人の間で、止まった人だけが明るく見えた

明るい通りの端へ寄ると、人の流れが少しだけ遠くなった。正面から来る人は急いでいるように見え、横を抜ける人は顔より先に袖や鞄の線だけが残る。立ち止まれば、こちらだけが流れから外れたようだった。

人の多い場所では、止まることに理由が要る気がする。待ち合わせをする、地図を見る、店を探す。けれど理由が決まる前に、ただ足を遅くしたい瞬間もある。流れの中にいると、身体は周囲の速さへ合わせてしまう。どこへ行くかより、次にぶつからず進むことが先になる。端へ寄って初めて、看板の文字や路面の反射や、少し離れたところで話す声が別々に聞こえてくる。歩くための速度から外れると、通りは急に多くの小さな時間を持ち始める。

しばらくして、目の前を横切った人の影が照明で細くなった。誰かが振り返り、すぐ別の方向へ消える。その間も、こちらの立つ場所には新しい人が近づき、また通り過ぎる。流れを止めることはできないが、少し脇へ立つだけで、同じ流れを別の側から見られる。

もう一度歩き始めると、さっきまで見ていた看板は背中の方へ移った。人の間へ戻る足音だけが、前より少しはっきり聞こえた。