或る世界

葉の下の水平線

葉の下にだけ、遠い水面がまっすぐ残った

木の下から水辺を見ると、空より先に水平線が目に入った。手前の葉は濃く、枝の隙間を埋めている。けれどその下には、葉が届かないほど遠い水面があり、まっすぐな明るさだけが続いていた。

近いものは、細部まで見える代わりに視界を狭くする。葉の縁、枝の曲がり、小さな揺れは、目を向けるたびに別の形を作る。遠い水はその反対で、細かいことは分からないまま、全体の向きだけを残す。どちらが本当の景色ということではない。近いものを見ているあいだに遠いものの広さを忘れ、遠いものを見ているあいだに足元の影を忘れる。その二つは同じ場所にあっても、一度には受け取れない。

水辺の方から小さな声がして、葉の一枚が揺れた。目を下ろせば、人は遠くて形しか分からない。近くの葉の方が、かえってその声の方向を教えてくれる。見通しを遮るものは、いつも景色を減らすだけではない。手前の輪郭があるから、遠くの明るさがどこから始まるか分かることもある。

風が止まると、葉の下の線はさらにまっすぐになった。水面は動いているはずなのに、こちらからは静かな帯にしか見えなかった。