或る世界

ガラス戸の内側

戸が開いていても、飾りは室内の光を受けていた

ガラス戸が開いていると、もう外へ出たような気になる。風の気配も、通りの明るさも中へ入り、床の上には外から伸びた影がある。それでも一歩をまたぐ前には、室内に残っているものが急に目に入る。

入口は内と外をきっぱり分けるための線ではない。扉が閉じていれば、材質や鍵や表示が境目を強くする。開いているときには、光と音だけが先に行き来し、人の身体は自分で境目を越える。だから戸口に立つと、出ることより、まだどちら側にも完全にはいないことが分かる。壁際の飾りは室内の影を持ち、ガラスの向こうの街は同じ明るさを受けている。近くにあるものと遠くにあるものが、一つの開口部へ同時に並ぶ。

色のある飾りを見上げると、窓の外の空より濃く見えた。作られた形は動かないが、差し込む光によって輪郭を変える。外へ出るための場所に、出る理由とは関係のないものが置かれていると、足を進める速さが少し遅くなる。目的地へ向かうために開いた戸でも、通り過ぎるだけでは見えないものがある。

手を離すと、戸は風に押されず同じ角度で止まっていた。外の光を受けた床に、飾りの色だけが細く残った。