灯りの前の空

街灯の下へ来たとき、まだ灯りはついていなかった。空の低いところだけが濃い橙色で、柱や信号の輪郭は、その明るさの中で黒く切り取られている。光があるのに、もう見えにくくなり始めていた。
昼の明るさが消えると、街は急に暗くなるのではない。先に遠くの形が分からなくなり、次に足元の色が薄れ、最後に人工の灯りが必要になる。切り替わりのあいだには、どちらの光にも完全には頼れない時間がある。目はまだ空を使い、手はそろそろポケットや鞄の中を確かめたくなる。明るいと暗いの間には、ただ待つだけでなく、次に何へ注意を向けるかを替える短い作業があるのだと思う。
信号の前に立つと、横断するための色だけははっきり見えた。空の色を写していた窓は、少しずつ周囲の影を受け取り始める。道を渡る人の顔までは分からないが、靴音の間隔で誰かが近づき、通り過ぎたことは分かる。見えなくなるものが増えても、街が急に静かになるわけではない。
やがて一本の街灯が白くなった。空の橙色は残っていたが、道路の端に落ちた影だけが、別の時間を先に始めていた。