或る世界

芝生の仮の家

広い芝生に、今だけの屋根が立っていた

芝生の端に、小さな屋根が立っていた。木の枝より低く、背後の建物よりずっと低い。風が通れば布の面は揺れるだろうが、地面へ打たれた四隅だけは、そこにいる時間を支えているように見える。

広場には、長く残るために作られたものがいくつもある。窓の多い建物、歩道、太い木、手入れされた斜面。どれも一度置かれれば、次の日も同じ場所にあることを前提にしている。そのあいだにある小さな屋根は、同じ場所へ根を下ろすためでなく、必要な時間だけ日差しや荷物を引き受けるために見える。小さいことは頼りなさではなく、片づけられることを含んだ形なのかもしれない。

近づくと、入口は広場の方を向いていた。中が見えないからこそ、外からは余計なことを決めずにすむ。誰が入るのか、どこから来たのか、いつまで置かれるのかは分からない。ただ、芝生の上に低い影があり、その影の内側だけが周囲と別の速さで時間を持っている。

少し離れると、屋根はまた建物の大きさに囲まれた。それでも、木の下に残る小さな明るい面だけは、持ち運べる場所のように見えた。