或る世界

動く段のそば

動く段の外側で、影だけが先に着いた

足元の黄色い線へ近づくと、段はすでに次の高さへ運ばれていた。乗る瞬間だけを待っているように見えても、階段の方は誰より先に動いている。

片足を置く前に、影が明るい床へ伸びた。身体はまだ平らなところにあり、影だけが斜めの流れに触れている。

手すりを握ってから見下ろすと、さっきいた床は少し遠い。段の外に残った影は、そこでほどけて見えなくなった。

上へ着くことより、最初の一歩の前にどちらの速さへ合わせるかが、しばらく気になった。