或る世界

指の届くところ

花を取らずに、指だけが枝のそばで止まった

枝の先にある花へ、指を一本だけ近づけた。光が強く、花びらの縁は白くほどけ、指先の影だけが枝に残る。

届く距離に来ると、触れる理由が急になくなった。花は風でも動いたのかもしれず、こちらが手を出さなくても、枝は十分に揺れている。

指を曲げると、袖口の白さが視界へ戻った。手を引くことは何もしないことではなく、枝の側に空いた場所を残しておくことになる。

幹のそばから離れて見ると、花は小さくなった。さっき指先にあった距離だけが、明るいところにしばらく残る。