或る世界

親指の外

親指を離した場所で、画面の灯りは残っていた

スティックを右へ倒した親指を、途中で止めた。画面の小さな人物らしい像は段差の手前に残り、奥の灯りだけが暗い壁を照らしている。次のボタンへ移る前に、手を膝へ下ろした。

操作しているときには、画面の端が次々に近づいてくる。進むためには、見えていない先を急いで呼び出す必要があるように思える。しかし親指を離すと、今いる場所の灯りや床の線が、まだ消えずに残っている。

自分が動かさない間にも、画面の中で何かが進むのかは分からない。音も切っていた。ただ、何もしない手元と、色のある小さな画面が並ぶと、止まることは画面を閉じることとは違って見えた。

もう一度手に取ると、親指はまだスティックの上へ戻らない。画面の灯りは、次の操作を急かさず、卓上の白さへ小さな色だけを返していた。