或る世界

水面の外側

竿先は遠く、手元の回転だけが止まっていた

リールを二度回したところで、手を止めた。竿の先は水面のずっと先を指しているが、糸がどこへ入っているかは逆光の中で分からない。巻けば近づくものがあると思い、親指をハンドルから離した。

対岸には塔や煙突が並び、橋も水の上を横切っている。遠いものは輪郭を持ち、日差しを受けた水面には小さな光の列ができていた。そのあいだにあるはずの細い線だけが、目を凝らすほど見えなくなる。

竿先がわずかに下がった気がして、もう一度手を掛けかけた。けれど風か、水の揺れか、糸の重さかは決められない。見えない先を急いで答えにすると、巻く速さだけが先に決まってしまう。

しばらく待つと、足もとの水に丸い輪が一つ広がった。糸の先とは違う場所だった。私はリールを回さず、その輪が柵の影へ溶けるまで見ていた。