ひとつ前の籠

観覧車の足もとで、ひとつ前の籠がゆっくり持ち上がるのを見ていた。自分の前に来るはずの場所は、まだ低い方の曲線を回っている。時計を見るより、窓の色を追う方が早かった。
上へ行く籠には、空が多く映る。けれど自分に近づくのは、いちばん高いところにある籠ではない。その一つ前が上がるたび、下のどこかに次の空いた場所が生まれ、円の裏側から順にこちらへ回ってくる。
待っている間、目は高い方へ行きがちだった。高くなれば遠くまで見えるからだろう。しかし乗るために必要なのは、空の広さではなく、地上へ戻ってくる一つの扉だった。
やがて足もとで籠が止まる。さっきまで空の小さな四角を抱えていた窓は、もうこちらの顔を映している。扉が開くと、次に上がる籠の列が、背中の後ろでまた一つずつ動き始めた。