或る世界

器の外の柄

掬う部分は隠れ、次に握る端だけが立っている

器の縁へ大きな匙を立てると、赤い柄だけが料理より高く出た。掬う側は中へ沈み、手の届くところには次に握る端だけが残る。

使い終えた道具なら、皿の脇へ横たえる方が自然に見える。けれど柄を立てておくと、匙はまだ器の中に半分残りながら、もう一度外から触れられる。中身と手のあいだに、次の動作だけが先に置かれている。

器の中にある部分は、いま何を掬っているのか見せない。柄も量や味を知らせない。それでも向きと高さだけで、手が戻る場所を消さずにいる。

指を柄へ添えると、匙は器の中で少し傾く。取り出す前から、次の一口のための持ち手だけが、卓上に立っている。