段に残る幅

階段の途中へ腰を下ろすと、膝の前に次の段が一枚だけ残った。足を広げれば、手すり側へ上がる人の幅を塞いでしまう。私はつま先をそろえ、鞄を膝の上へ置いた。
階段は、上か下かへ身体を運ぶためのものだと思っている。座るときも、その役目が消えるわけではない。自分の背中の後ろでは人が降り、膝の横には、まだ誰かが通るための細い道が残る。
段に座ることは、通路を自分の場所に変えることではなく、残しておく幅を決めることなのかもしれない。広場の椅子なら、隣が空いていても人は遠回りする。階段では、空いた幅がそのまま次の足の置き場になる。
立ち上がると、座っていた段はすぐ階段へ戻った。つま先の横を通った靴音だけが、まだ一段下で短く鳴っていた。