或る世界

濡れた赤の濃さ

同じ赤の上で、水滴はそれぞれ別の濃さを残している

花びらに残った水滴を近くで見ると、同じ赤の上に、濃く沈むところと白く光るところがあった。小さな滴は点のように散り、大きな滴は周りの色を丸く抱え込んでいる。

濡れることは、表面の色を一つに変えることだと思っていた。けれど水は薄い膜にならず、ところどころで形を持って残る。花びらの赤は滴の外ではそのまま続き、滴の内側では深くなったり、光を返したりする。

同じものの上にある同じ水でも、触れる面積と厚みが違えば、目へ届く色まで同じにはならない。濡れたという一語だけでは、どこがどう変わったかを言い切れないらしい。

花がわずかに揺れると、いくつかの滴が光を移した。赤は動かなかったが、濃さの違う小さな場所だけが、花びらの上で順に明るくなった。