受け皿の中央

小さなカップを受け皿へ戻すと、底がいったん縁へ触れた。軽い音のあと、器は少し傾いたまま止まり、液面だけが片側へ上がった。
手を離さず、ほんの少し横へ滑らせた。もう一度、今度は短い音がして、底の円が受け皿の中央へ落ち着いた。縁に触れたときには大きく揺れた水面が、細かい輪を残して戻ってくる。
器を置くという動作は、一度の接触では終わらないらしい。受け皿の中心へ収まるまで、底は自分の居場所を探し、水面はその遅れを見せている。
最後の輪が消える前に、指を持ち手から外す。白い皿の中央でカップは動かず、さっきまでの傾きを映す明るさだけが、縁の内側に薄くとどまる。