或る世界

手と係留索

細い黒だけが、離れた輪郭を一つに保つ

低い光を正面から受け、遊歩道を行く人々は黒い輪郭になっていた。顔も服の色も見えない。その中で、背の低い一人と隣の大きな一人を結ぶ手だけが、二つの形の間に細く残っていた。

背の低い人が横へ一歩ずれると、二人の身体の間へ明るい水面が入った。別々の輪郭になっても、手のところだけは切れない。誰なのかは分からなくても、離れずに歩いていることは分かる。

少し沖には木造船が停まり、その船腹から浮標へ黒い線が延びていた。船と浮標の間には何もないように水が光っている。それでも係留索らしい一本が、船がどこから離れないのかを示していた。

手の線は二人と一緒に舗道を進み、索の線は同じあたりの水面で伸び縮みしていた。同じ細さでも、一方は歩くたび場所を移し、もう一方は船が遠くへ流れない範囲を水の上に残していた。

波で船がわずかに揺れると、細い索は一度水へ沈み、また光の上へ現れた。遊歩道では、つないだ二人の腕が歩調に合わせて一度だけ前へ振れた。