柱と荷物のあいだ

動く歩道へ乗ると、前の人はそのまま歩き続けた。私はいったん足を止めた。床が同じ速さで二人を運んでいるのに、白い服といくつもの荷物は少しずつ遠ざかっていった。
前の人だけが進み、立っている私は止まっているように見える。だが、脇の柱へ目を移せば、こちらも一つずつ後ろへ送っている。二人の間では消えた床の速さが、柱との間には現れる。
では、前の人の速さは一つなのだろうか。私から見れば、遠ざかる速さは歩幅の分だけである。柱から見れば、そこへ床の速さも加わる。同じ身体が、何との間を測るかによって二つの速さを持つ。
私も歩き始めると、荷物との間隔はそれ以上開かなくなった。前の人は止まったように見えたが、白い柱だけは先ほどより速く流れ始めた。
終端で前の人の靴が静かな床へ移り、わずかに歩調を変えた。続いて私の足も境を越えると、さっきまで二人の下にあった速さだけが、背後へ戻っていった。