雲の片端が古い

海辺で空を見上げると、長い白い筋の片端は細く、もう片端は幅を増して周囲の雲へ混じり始めていた。同じ一本なのに、端から端まで同じ年齢ではない。
一本の線を見ると、全体が同じ瞬間に引かれたように感じる。紙の上なら、端から描いた短い時間差は、完成した線の中でほとんど意味を持たない。しかし空では、最初に作られた部分が風を受けているあいだにも、反対側で新しい部分が加わっていく。
そのため、できたばかりの場所は細く、時間のたった場所は輪郭を緩める。長さの方向が移動した距離を示す一方で、幅の違いは、各場所が空に置かれてからの時間を示している。
時間は、線の外から一様に進むだけではないらしい。一本の内側にも、先に始まったところと後から始まったところがある。現在の空へ、少しずつ違う過去が横に並んでいる。
風が白い筋を横へ押すと、古い端から境が曖昧になった。消える順番まで、作られた順番を追っている。一本だったものは片端から雲へ戻り、細い方だけが、まだ線でいられる時間を残していた。