或る世界

車が道を描き足す

一台ずつの移動が、離れた目には一本の道になる

高い場所から夜の街を見下ろすと、道路は建物の間を通る黒い隙間ではなく、長い光の筋になっていた。地上では一台ずつ離れていた車の灯りが、遠い目には切れ目の少ない一本へつながっている。

道は、舗装と縁石によって先に作られている。車が一台もいなくても、地図には同じ線が残るはずである。しかし夜の高所からは、動くものがなければ、その線は周囲の暗さへ紛れやすい。

一台の前照灯が見せるのは、その車の少し先だけである。けれど、別の場所を走る車の灯りを同時に眺めると、それぞれの短い明るさが道路の曲がり方に沿って並び、離れた区間を結び始める。

街の道筋を見せていたのは、道そのものだけではなかった。そこを通り続ける無数の移動が、使われている線だけを何度もなぞり、夜景の中へ浮かび上がらせていた。

一台が交差点を曲がり、光の列から外れた。筋はそこで切れず、後ろから来た別の灯りが同じ場所を埋めた。誰も道の全長を走ってはいないのに、別々の短い移動が、街を貫く一本を描いていた。