欠けた方を持つ

料理へ差した匙の持ち手は、先が少し欠けていた。それでも指を置く長さは残り、反対側の掬う部分も形を保っている。欠けた方を持ってみると、匙は何事もなかったように一口を運んだ。
道具が壊れたかどうかは、元の形と比べて決めるものだと思っていた。欠けや割れがあれば不完全で、交換する理由になる。しかし、失った場所と仕事に使う場所が一致しなければ、形の損失がそのまま機能の損失になるとは限らない。
持ち手は手と匙を離すための長さである。先端のわずかな部分がなくても、指が料理へ触れない距離は残る。掬う側が欠ければ汁はこぼれるだろうが、同じ大きさの欠けでも、反対側なら仕事への影響は小さい。
一口を運ぶたび、欠けた先は手の外に少し出ていた。直す必要がないという意味ではない。ただ、壊れた量だけでなく、壊れた場所を見なければ、何が失われたのかはわからない。匙は短くなったまま、皿の底まで届いていた。