或る世界

一杯が腕より長い

細く延びた量が、器の中でもう一度縮む

高く掲げた器から飲み物を注ぐと、一杯ぶんの量が、腕より長い細い線になった。手元の器に入っていたときには短く丸く収まっていたものが、落ちているあいだだけ、二つの器の距離いっぱいまで延びている。

量には、それにふさわしい大きさがあるように思える。一杯なら片手で持てる器、一鍋なら両腕で抱える容器である。しかし液体は、量を増やさなくても形を大きく変えられる。幅を細くすれば、少ない一杯でも長い空間をつなげられる。

流れの先が下の器へ触れると、上に残る液体と、下にたまり始めた液体が一本につながった。すべてが移り終えるまで、一杯はどちらか一方の器だけには収まらない。上から減り、空中を通り、下へ増える三つの形を同時に持っている。

最後の細い筋が切れると、飲み物はまた片手で持てる大きさへ戻った。短くなったのではない。長さとして使っていた形を畳み、受ける器の幅と深さへ置き直したのである。