或る世界

空中にも棚がある

足場のない高さが、見上げる人の売場になる

吹き抜けを見上げると、頭上にいくつもの明るい箱が浮かんでいた。床から眺めても、上階の通路から眺めても、箱の近くへ歩いていく道はない。人の身体には届かない高さだけが、展示場所になっている。

物を並べるには、まず棚や床が必要だと思っていた。置く面を増やせば、その分だけ歩く場所は狭くなる。ところが天井から吊れば、足もとの通路を空けたまま、吹き抜けの途中へ新しい置き場所を作れる。

そこは売場であっても、人が立つ場所ではない。手に取ることも、裏側へ回ることもできず、離れた階から見ることだけが許される。身体を招かない代わりに、複数の高さにいる人の視線を同じ箱へ集めている。

歩き出すと、箱同士の重なりが変わり、さっき見えなかった側面が現れた。床は一枚も増えていない。それでも空だったはずの高さには、見上げるたび別の順で並ぶ棚ができていた。