海から離れた波打ち際

波打ち際へ近づく途中で、砂の上を横切る細長い帯をまたいだ。流木や葉に混じって、片方だけの履物や色のついた容器が重なっている。海はその先にあるのに、足もとにも別の水際が残っていた。
波の境目は、寄せては退くたびに動く。いま白く泡立つ線だけを見れば、海はそこまでしか来ないように思える。しかし、陸側の漂着物は、水がもっと近くまで届いていた時間を砂の上へ置いている。
水そのものは退いてしまった。濡れた跡も日差しの中で乾けば消える。それでも、浮かんでいたものや押されてきたものは、波が力を失ったあたりで止まり、ばらばらの物から一本の境目を作る。
足首へ来た波が引くのを待って、もう一度その帯を振り返った。海から離れた場所にあるのに、そこも波打ち際だった。現在の海岸線ではなく、水がかつて届き、手放した場所として残っていた。