或る世界

城壁の中の一人分

小さな身体を置くと、石の大きさが測れる

城壁を見上げても、最初は石の大きさがよくわからなかった。遠くにある壁は小さく見え、近くの岩は大きく見える。ところが壁の上を一人の人が歩くと、周りの寸法が急に身体へ近づいてきた。

人の背丈なら、数字を知らなくてもおおよそ想像できる。その一人分を隣へ何度か置けば、壁の高さや岩の幅を目の中で測れる。人は城を作る尺度として立ったのではないのに、そこにいるだけで巨大さを読める目盛りになる。

大きいという言葉だけでは、岩も城壁も同じ一語に収まってしまう。けれど、胸壁からわずかに出る頭や、階段を一段ずつ上る脚を見ると、壁には肩を何人分も積む高さがあり、岩には身体が何人も横になれる幅があるとわかる。

歩いていた人が門の影へ消えると、城はまた寸法を失った。石は同じ場所に残っている。それでも、一人分の目盛りがなくなっただけで、巨大さは数字のない景色へ戻っていった。