正面へは横から行く

白い建物の正面へ近づこうとすると、人の流れは左右に分かれた。中央には入口までまっすぐ伸びる水路があり、いちばん正面に見える線を歩くことはできない。
目的地へは中心を目指せばよいと思っていた。けれど、ここでは中心が道ではなく、建物の姿を映すための細長い場所として空けられている。人がそこを歩かないからこそ、遠くから入口とドームを結ぶ一本の軸が見える。
歩けない中心は、進む方向を役に立たなくするわけではない。水路の右を歩いても左を歩いても、その線が正面の位置を教え続ける。身体は中心からずれながら、視線だけは中心へ向かう。
近づくための道と、近づく先を見せる線は、同じでなくてもよいらしい。水路の端まで来て横へ戻ると、二つに分かれていた人の流れは、ようやく一つの入口へ集まった。