或る世界

奥へ行くほど近くなる

同じような隙間が、遠くで細く重なっていく

天井を見上げると、石の筋が奥まで何本も続いていた。手前では一本ずつの間が広いのに、遠くでは細い隙間が重なり、仏像の上へ吸い込まれていく。

遠くのものは小さく見える、と考えることはある。けれど、小さくなるのは物だけではない。物と物のあいだにある空白もまた、距離に押されて細くなる。奥は暗いから遠いのではなく、たくさんの隙間がわずかな幅に収まっているから遠いのだ。

そこへ歩いて近づけば、固く畳まれていた隙間が一つずつほどけてくる。距離は床の長さだけでなく、目の中で圧縮された間隔としても置かれていた。