或る世界

一台にいくつもの入口

同じ到着が、扉ごとに別の待ち時間を終わらせる

列車を待つ人は、ホーム全体へ均等には並ばない。扉が止まりそうな場所へ小さな群れを作り、隣の群れとのあいだには細い空白を残している。

来るのは一台の列車である。それでも、到着する入口は一つではない。長い車体の側面に扉がいくつも開き、それぞれの前で別の乗り降りが始まる。

建物なら、入口へ人が集まり、入ったあとで廊下や部屋へ分かれていく。列車では順序が逆になるらしい。乗る前から車両ごとに待つ場所が分かれ、同じ列車へ向かう人々が、離れた入口を選んでいる。

一台の到着は、一本の長い出来事に見える。しかしホームでは、先頭近くの扉が開く瞬間と、遠い端の扉が開く瞬間が、それぞれ別の人の待ち時間を終わらせる。列車の長さは多くの人を運ぶためだけでなく、入口を横へ増やすためにも使われている。

扉が閉じると、離れていた小さな群れは同じ車体の中へ収まった。ホームにはまた空白が戻る。一つになったのは列車ではない。初めから一台だったものへ、いくつもの入口から人が集まったのである。