空には列ができない

広場に人が集まると、入口や柵の前から列ができる。前の人を追い越すには横へずれなければならず、横にも人がいれば、空くまで待つことになる。
その頭上では、多数の鳥が互いに重ならず飛んでいた。写真の中では密集して見えるのに、一羽ずつは前後だけでなく、上や下にも離れられる。
地面を歩く身体が使えるのは、ほとんど前後と左右だけである。目的地が同じなら経路は細い場所へ集まり、人の数が増えるほど詰まりやすい。しかし空では、高さがもう一つの逃げ道になる。同じ方向へ向かっても、上を通る一羽と下を通る一羽は、同じ場所を奪い合わなくてよい。
混んでいるかどうかは、数だけでは決まらないらしい。百の身体がいても、それを置ける方向が一つ増えれば、互いの間隔を作り直せる。反対に広い場所でも、使える面が一枚しかなければ、門の前のように流れは重なる。
鳥が向きを変えると、黒い点の集まりは広がり、また縮んだ。数は急には変わらない。それでも、空の厚みを使うたび、群れは列にならずに形を変えていた。