或る世界

壁は空まで届かない

越えられない高さは、身体ごとに違っている

城壁を下から見上げると、その高さは行く手を閉じるためにあるように思える。門を探さなければ向こう側へ行けず、石を積み上げた分だけ、こちらと内側の距離が遠くなる。

ところが、壁の上を鳥の群れが横切っていった。鳥は門の位置を確かめず、石のいちばん高いところさえ、進路の下へ置いてしまう。

境界は、そこにある物の形だけでは決まらないらしい。地面から離れられない身体には壁でも、空へ上がれる身体には低い段差になる。同じ高さが、ある者の道を終わらせ、別の者には足もとにさえ触れない。

壁は誰に対しても同じように立っている。しかし、越えられないという働きは、相手の身体と出会ったところで初めて生まれる。鳥が飛び去ったあと、城壁はまた空を切る暗い線へ戻った。線は高かったが、空まで閉じてはいなかった。