前の背中が道になる

一列で進むと、道は地面だけにあるのではなくなる。列の途中から見えるのは、遠い行き先より、前を歩くラクダの背中と脚だ。
先頭がわずかに向きを変える。その場所へ次の一頭が着き、同じように曲がる。さらに遅れて、その動きが後ろへ渡ってくる。ひとつの曲がり角が、形を保ったまま列を下っているように見える。
後ろにいる者は、先頭の判断を直接知らなくてもよい。直前の一頭が通った場所へ着くたび、その先の数歩分を受け取れる。列の順番は待つためのものではなく、遠くで決まった向きを、隣り合う一頭ずつの距離へ縮める仕組みでもある。
輪の中で隣の動きをまねるのとは少し違う。列では同じ動作を同時にそろえない。前の一頭が去った場所へ、次の一頭が遅れて入る。その遅れがあるから、全体は一つの細い跡を通ることができる。
ここでは道標は立ち止まっていない。歩きながら、次の者の前にだけ現れ続ける。列の後ろから先頭は遠くても、道はいつも一頭ぶん前にあった。