或る世界

壁の中の遠回り

近い二端のあいだへ、長い表面を折り畳む

石造りの寺院を見上げると、壁を横切るはずの線が、何度も手前と奥へ折れていた。柱の脇で少し出て、窓の下で引っ込み、角へ来るとまた外へ張り出す。同じ高さをたどっているのに、線はまっすぐ進まない。

建物の外周は、上から見た輪郭で測れると思っていた。四角い建物なら四辺を足せばよい。けれど、壁面に細かな凹凸が加わると、二つの角を結ぶ距離は変わらなくても、その表面を指でなぞる道は長くなる。

装飾は、壁へ模様を置くことだと思いがちである。平らな面に線を彫り、像を付ければ、壁の大きさはそのままに情報だけが増える。しかし、石そのものを前後へ刻めば、模様は見るための印であると同時に、触れられる遠回りになる。

小さな段差一つでは、増える長さはわずかである。それでも、同じ折れが柱や窓の周りへ繰り返されると、平らなら一息で終わる幅の中に、何度も角を曲がる道が折り畳まれる。正面から見た大きさを変えずに、壁は表面だけを長くできる。

目で輪郭を追っているうちに、途中でどの段をたどっていたのかわからなくなった。二つの端は近いままなのに、その間には手前と奥が何度も挟まっている。寺院の壁は場所を広げず、一枚の面の中へ長い寄り道を刻んでいた。