足もとだけ先に夜

日が低くなると、屋上にいた三人の顔が先に見えなくなった。服の色も、手に持っているものも、暗い輪郭の内側へ沈んでいく。それでも、二人が座り、一人が立っている形は空の明るさに残った。
夜は、景色のすべてへ同時に来るものだと思っていた。空が暗くなれば建物も人も暗くなり、見えていたものが一緒に見えなくなる。ところが、夕暮れの光は一枚の景色を同じ速さでは消さない。
光を受けにくい顔や壁の窪みは早く閉じ、明るい空に接する肩や屋根の縁は遅くまで見える。物の内側と外側では、同じ時刻でも暗さの進み方が違う。色が消え、表情が消え、そのあとに輪郭が残る。
見えなくなることには、順番があるらしい。昼の情報が少しずつ減っていくのではなく、背景との明るさの差を失った部分から、一つずつ景色を離れる。暗い壁へ重なる足はもう見えず、空へ重なる頭はまだ残っている。一人の身体の中にさえ、先に夜へ入る場所と、あとから入る場所がある。
太陽がさらに下がると、石の壁と人物は同じ暗さへつながった。最後まで見えていたのは、物ではなく、その外側をなぞる細い空だった。夜は空から一枚の幕として降りるのではない。景色の内側で、境目を失ったところから静かに始まっていた。