空際の持ち主

連峰を横へ目でたどると、雪の峰が上がったり下がったりしながら、空との境を一本の線で描いていた。遠くからなら、それは長い山の背中のように見える。
けれど、線を作っている山は一つではない。手前の峰が低くなるところから、さらに奥の峰が頭を出す。少し進めば、今度は別の稜線が重なり、さっきまで空に触れていた山を途中から隠す。
空との境界は、どこか一つの尾根を最後までたどっているのではなかった。見える山のうち、その場所でいちばん上に出たものだけを順に拾っている。一本に見える輪郭の途中で、線の持ち主は何度も入れ替わっている。
連続した線を見ると、その下も連続した一つの面だと思いがちである。しかし、隣り合う二つの頂が、同じ山肌でつながっているとは限らない。その間には、手前の斜面に隠された谷や、さらに奥へ離れた距離が折りたたまれている。
視線を一つの峰から外さずに下ろすと、その稜線は途中で別の山の後ろへ消えた。空の縁だけを見ていたときには一続きだった連峰が、重なりを見分けた途端、前後へほどけていった。