或る世界

灰はまだ一本

火が通り過ぎても、輪郭だけはすぐには崩れない

金色の像の口元で、煙草の先に灰が長く伸びていた。火は紙と葉を少しずつ失わせているはずなのに、一本の外形は、火をつける前とあまり変わっていない。

燃えたものは、その場からなくなると思っていた。薪なら低くなり、蝋燭なら短くなる。減った量が形へすぐ現れるから、残りも目で確かめられる。

ところが煙草は、燃えた部分を灰の円柱へ置き換えながら進む。まだ吸える部分は短くなっているのに、灰が落ちるまでは、その先にも同じ太さの続きがある。残っている長さと、形として残っている長さが一致しない。

外形が保たれていると、中身もそこにあるように思える。しかし灰の部分は、以前の形を借りているだけで、もう同じ働きへは戻れない。輪郭は、ときに変化へ少し遅れて崩れるらしい。

灰が折れて下へ落ちると、煙草は急に短くなった。そこで失われたのは、落ちた瞬間の長さではない。火が通り過ぎた時間が、遅れて形に現れたのである。