或る世界

尖塔は空の目盛り

空の速さは、動かない縁に触れて初めて見える

低い太陽を眺めていると、空の高いところにいたときより、動きがよく見えた。円の縁が遠い稜線へ触れ、少し待つと、重なっている部分がわずかに変わっていく。

太陽は空のどこにあっても動いている。けれど、広い空の中に一つだけ浮かんでいると、数分の移動を目だけで確かめるのは難しい。比べるものがなく、同じ場所に留まっているように見える。

地平へ近づくと、山の凹凸や寺院の尖塔が、動かない目盛りになる。円の縁がどの尖塔の横にあり、稜線とどれほど重なったか。その差を追えば、空のゆっくりした移動が形になる。

動きを知るには、動くものだけを見ても足りないらしい。変わらない線を一つそばに置くことで、初めて変化の量が見えてくる。

バガンの暗い尖塔は、時刻を示す数字を持たない。それでも太陽との隙間が少しずつ変わるたび、空が進んだ分だけを黙って教えていた。