或る世界

二人分の一歩

同じ速さは、同じ歩幅から生まれるとは限らない

歩幅の違う人と手をつないで歩くと、自分の一歩が相手の一歩ではないことが掌から伝わってくる。こちらが片足を出すあいだに、隣では短い足が二度動くことがある。

同じ速さで進むとは、同じ動きをすることだと思っていた。だが、脚の長さが違えば、同じ歩幅と同じ速さを両方そろえることはできない。歩幅をまねれば離れてしまい、離れないためには歩数を変えなければならない。

手をつなぐと、二人のあいだに一定の距離ができる。前へ引きすぎれば腕が張り、遅れれば掌の位置が後ろへずれる。顔を見なくても、その小さな変化が次の一歩を少し短くしたり、少し早くしたりする。

歩調を合わせることは、同じ足取りへそろえることではないらしい。大きな一歩と小さな二歩が、同じ時間に同じ距離を進めばよい。違う動きを続けたまま、二人の速さだけを一つにできる。

混んだ道で人を避けると、つないだ手が一度だけ斜めになった。次の数歩で腕はまた横へ戻った。足もとの数は違うまま、二つの鞄は並んで同じ先へ揺れていた。