或る世界

向こう岸が目的ではない

渡り切るためでなく、途中へ届く細い道

線路の脇に、人一人が歩けるほどの細い通路が延びていた。どちらも橋の端から端まで続き、歩けば同じ向こう岸へ着く。それでも、二つの道は同じ目的地を持っているとは限らない。

線路は、人や荷物を一方の岸から反対側へ運ぶためにある。途中はなるべく速く通り過ぎたい場所で、列車にとって意味があるのは、橋を渡り切った先だろう。

しかし、脇の通路を点検のために歩くなら、事情は逆になる。枕木の継ぎ目、錆びた金具、管を留める一か所へ着くたび、そこが目的地になる。橋の端へ早く着いてしまえば、途中を見る仕事は終わらない。

道は、出発地と到着地を結ぶものだと思っていた。だが、別の道を保つための道では、端と端より、そのあいだにあるすべての場所へ届くことが大切になる。通路全体が、長く引き延ばされた作業場なのである。

細い通路は線路と同じ方角へ、同じ長さだけ延びていた。けれど、向こう岸だけを目指す線の隣で、一歩ごとに途中へ着くための道に見えた。