或る世界

何本だったか

一切れ増えるたび、元のまとまりは遠くなる

皿に盛られた巻き物を、私は切れ数で数えた。ひと口ほどの大きさがいくつあるかなら、目で追うだけで分かる。けれど、その前に何本あったのかと考えた途端、答えは曖昧になった。

切る前なら、閉じた皮の端から端までが一本である。刃を入れれば一本は四つか五つになり、量は変わらないのに数だけが増える。さらに何本分かを同じ場所へ重ねると、端のある切れと途中の切れは見分けられても、どれとどれが同じ皮に包まれていたかまでは戻せない。

分けることは、同じものを小さくするだけだと思っていた。しかし実際には、新しい単位を作る代わりに、古い単位の境目を捨てることでもあるらしい。食べやすさを得た皿の上で、いまある一切れは数えられる。それでも、もうない一本の数だけは、誰かの記憶に頼るしかなかった。