夕日は一度戻る

川を進む舟から夕日を見ていると、太陽が山の稜線へ触れ、そのまま向こう側へ消えた。水面の光も細くなり、夕方はそこで終わったように思えた。
ところが、舟が少し進むと、隣の峰との切れ目から太陽がもう一度現れた。さっきより低くはなっている。それでも、いったん失った明るい円が空へ戻っている。
太陽が昇り直したわけではない。動いたのは、こちらの位置である。舟が川を進むあいだに、手前の山の重なり方が変わり、隠していた稜線から次の谷間へ視線が移った。
日没は時刻だけで決まるものだと思っていた。しかし山の近くでは、どの峰を地平線にしているかによって、同じ太陽にも複数の終わりができる。少し離れた舟では、まだ見えているかもしれない。
太陽は再び山へ近づいた。今度は舟が進んでも、先に切れ目は見つからなかった。二度目の光が消えると、川面に残った細い反射だけが、さっき夕方が一度戻った場所を示していた。