残りはまだ始まらない

同じ飲み物が何本も並んでいても、口をつけるのは一本ずつである。一本の蓋を開けても、残りは閉じたまま、まだ誰にも飲まれていない時間を保っている。
大きな容器へまとめれば、全体の量はそれほど違わないかもしれない。しかし、最初の蓋を開けた瞬間から、すべてが同じ一つの中身になる。小さな瓶に分かれていれば、いま必要な量だけを始め、残りには別の始まりを残しておける。
分けることは、一人分を決めるためだけではないらしい。同じものの中へいくつも境目を置き、触れる時刻をずらす働きもある。閉じた瓶は、まだ使っていない量であると同時に、まだ始めなくてよい時間でもある。
一本を飲み終えて空の容器を横へ置いた。並んだ瓶の総量は減ったが、残りの蓋には何も起きていない。次に喉が渇くまで、いくつもの始まりは、同じ青い蓋の下で別々に待っていた。