みんなで低くなる

飲み物の表面から泡を一匙すくうと、そこにできた窪みへ周りの泡がゆっくり寄ってきた。匙を口へ運ぶあいだに穴は浅くなり、やがて平らな面が戻ってきた。
最初と同じ形に見える。しかし、取った一匙が戻ったわけではない。窪みを埋めたのは、そこに残っていたものではなく、周囲から少しずつ移ってきた泡である。表面が直ったぶん、カップ全体の高さはわずかに下がっている。
一か所の欠けを、その場所だけで直せないことがある。隣から少し借り、そのまた隣もわずかに動き、最後には全体で不足を引き受ける。どこにも深い穴が残らない代わりに、どこも以前と同じ高さではいられない。
平らになることを、元に戻ることだと思っていた。だが、表面の滑らかさは、失った量まで回復した印ではないらしい。それは、一つの大きな欠けを、全体に薄く配り終えた形でもある。
もう一度すくうと、別の窪みができ、また塞がった。誰かが穴を埋めたようには見えない。ただ、残ったものがみんなで少しずつ動き、みんなで同じだけ低くなっていた。