或る世界

人より長い影

大きく見えるものほど、近くの光を背負っている

夜の屋台の前で、人の影が本人より長く路面へ伸びていた。身体は動かないのに、灯りへ近づけば影の先は遠ざかり、横へ回れば別の方向へ倒れていく。

影は身体の輪郭を写している。そのため、そこにいる人の大きさを示すもののように思える。しかし、同じ人でも影は短くなったり長くなったりする。変わったのは本人ではなく、光との位置関係である。

目に見える大きさを、そのものだけの性質として受け取りたくなる。長く残る影を見れば、強い存在がそこにあるように感じる。だが、大きな影には、それを作る近い光があり、受け止める地面がある。本人だけを測っても、その長さは説明できない。

人の働きや言葉も、ときに本人より大きな輪郭を持つ。しかし、それをすぐ本人の大きさと呼ばない方がよいのかもしれない。どこから光が当たり、どんな場所が受け止めたのか。目立つ結果の周囲にも、その形を決めた位置関係がある。

一人が屋台から離れると、影は足もとへ縮み、やがて暗がりに溶けた。人が小さくなったのではない。背負っていた近い光との関係が、そこで終わっただけだった。