或る世界

食卓の時差

どの皿にも、先に食べてほしい短い時間がある

料理がいくつも同時に運ばれてくると、食卓全体が完成したように見える。しかし、皿ごとの時間は、同じ速さでは進んでいない。

揚げたものは、置いた瞬間から少しずつ衣の軽さを失う。汁物は湯気と一緒に熱を手放し、炒めた麺も冷めていく。一方、生の葉は熱いうちに急いで食べるものではない。同じ卓上にありながら、それぞれが別の時計を持っている。

どれから食べるかを決めることは、好物を選ぶことだけではない。揚げ物を先にすれば汁物が待ち、汁物を飲めば麺の時間が進む。一つをいちばんよいところで受け取るあいだに、別の一皿ではその瞬間が過ぎていく。

全部を公平に急ぐことはできない。口は一つしかなく、一口ごとにしか進めないからだ。食卓を囲むとは、並んだ料理を同じ現在へ揃えることではなく、いくつもの短い時差のあいだを行き来することなのかもしれない。

揚げ春巻きを一つ取ると、衣がまだ軽い音を立てた。そのあいだにも汁の湯気は薄くなっていた。遅れた皿があったのではない。こちらが一つの時間しか選べなかったのである。