塀の長さだけ知っている

プノンペンの王宮の中について、私はほとんど何も知らなかった。それでも夜の塀に沿って歩くと、その知らない場所がどれほど長く続くのかだけはわかった。
塀の向こうに何があり、庭がどこまで広がり、どの建物がどこにあるのかは見えない。灯りは歩く先を照らすが、中を見せてはくれない。一歩進むたびに増えるのは、王宮についての知識ではなく、塀に沿って歩いた距離だった。
何かの周りを歩けば、少しずつ知ったような気になる。角を一つ曲がり、別の側面を見れば、全体へ近づいていると思える。しかし塀が同じ高さで続く場所では、見る角度を変えても、知らない部分は減らない。
むしろ、長く歩くほど、見えていない場所の大きさが増していく。最初は一枚の塀に隠れているだけだったものが、歩いた時間と曲がり角を持つ広い領域へ変わる。知らないことにも、外周があるらしい。
塀の先で足を止めた。王宮の内側について知ったことは、出発した場所とほとんど変わらない。ただ、何も知らないまま歩ける距離が、思っていたより長いことだけはわかった。