いちばん新しい光

アンコール・ワットへ着いても、暗いうちは、そこにあるはずのものがよく見えない。何百年も動かなかった建物を前にして、こちらは、まだ来ていない光を待つことになる。
古いものを見る旅では、過去へ近づくつもりでいる。石に残った傷や、失われた形をたどり、どれほど長い時間を越えてきたのかを考える。しかし、それを見せてくれるのは、いちばん新しく届いた朝の光である。
建物は夜のあいだにもそこにあった。光が当たったから生まれたわけではない。それでも、輪郭が空から切り離され、細部が少しずつ現れると、長く存在していたものが、目の前で初めて組み上がっていくように感じる。
古さは、昔の時間だけでできているのではないのかもしれない。残ってきたものは、そのたび新しい光や、新しく訪れた人の目を受け取る。過去の姿を保ちながら、見る側にとっては何度でも新しく現れる。
塔の輪郭が明るさの中へ溶け始めた。待っていたのは建物が姿を見せる瞬間だったが、実際に来たのは、古い建物へ届いたばかりの、誰のものでもない新しい朝だった。