写っていない人

景色を撮るときには、自分を写さないようにする。顔も手も入れず、誰がそこにいたのかを知らなくても見られる一枚にしたいと思う。
ところが、砂の上では、こちらが消えようとしても影が先に残る。カメラを構えた腕の角度や、隣に立つ人との間隔まで、地面の上に細長く写ってしまう。景色だけを選んだつもりの画面に、撮る側の姿勢が入り込む。
写真に写っていないからといって、その人がいなかったことにはならない。どこから見たか、どの時間まで待ったか、何を枠の外へ置いたか。写らなかった判断が重なって、ようやく一枚の景色ができている。
自分を消して撮ることには、慎みもある。目の前の場所を自分の記念写真だけにしないためだ。しかし、完全に透明な見物人になることはできない。立った場所は砂を踏み、選んだ方向は、別の景色を背中側へ追いやっている。
画面の端に影が伸びていた。顔は見えない。それでも、その一枚が誰かの目の高さから始まったことだけは、隠しようがなかった。