或る世界

黙っていられる場所

同じ卓を囲むだけで、言葉のあいだが落ち着く

誰かと向かい合って食べていると、会話が途切れることがある。次に何を言うか考えているのか、料理が熱いのか、ただ少し黙りたいのかは、すぐにはわからない。

机だけを挟んで座っていれば、その沈黙は急に大きくなる。相手の顔を見ながら、何かを埋めなければならないような気がしてくる。しかし食卓には、手を伸ばす皿があり、湯気を待つ器があり、一口を飲み込む短い時間がある。

食べることは、言葉の代わりになるわけではない。それでも、黙っている理由をいちいち説明しなくてよい場所を作ってくれる。箸やスプーンを置く音だけが続いていても、同じ卓にいることは途切れない。

知らない人と話すときには、早く打ち解けようとして言葉を増やしすぎることがある。けれども、食事のあいだに生まれる静かな時間なら、急いで親しさの形を決めなくても済む。味について一言交わし、またそれぞれの皿へ戻ればよい。

会話が途切れたあと、湯気の向こうから短い感想が返ってきた。さっきまでの沈黙は、埋めるべき穴ではなく、次の言葉を置くための場所になっていた。