或る世界

願いの余白

叶う形を決めないため、願いには余白がいる

願いごとを口にするとき、つい細かく決めたくなる。いつまでに、どこで、どんな形で実現してほしいか。具体的であるほど、こちらの本気が伝わるような気がする。

けれども、願いには、言い切らない方がよい部分もある。欲しい結果をあまり正確に描くと、そこへ至る途中で受け取れるはずだった別のものまで、違うからという理由で退けてしまう。

たとえば、安心して眠れる場所がほしいと思う。最初に浮かぶ一つの部屋だけを答えにすれば、それに似ていない場所はすべて外れになる。しかし、窓の向きや、隣で鳴る音や、そこで交わす会話まで考えれば、安心は一つの住所にだけ宿るものではないとわかる。

願いを曖昧にすることは、叶わなかったときの逃げ道を作ることではない。知らないうちに願いの形が変わる余地を残し、手にしたものを最初の言葉だけで測りきらないための余白である。

言葉にした願いを、胸の中でもう一度言い直した。最後のところだけを決めずに残すと、まだ何も起きていないのに、少し遠くまで受け取れる気がした。